君についた10のウソ

だんまりになってしまったあたしに透くんが質問を変える。



「じゃあさ、俺のこと、好き?」


「……うん」



…友達として、ね……


ひとりの友達として、大好きだよ。


だけど。


ひとりの異性として、好きだとは思えない。



「…“うん”って言うなら、“好き”って言って……?」



消えてしまってもおかしくない声でそう言った透くんに。


それだけは言えないと、思わず目をそらしてしまう。


“好き”と伝えていい相手は優だけだから。


どうしても、それは言えない。


沈黙に耐えられなくなったのか、透くんが口を開く。



「……ごめんね。困らせて」


「悪いのは、あたしだから……」


「大丈夫。分かってるよ」



そう言い残して透くんは教室を出て行ってしまう。


……分かってるって、どういう意味?


あたしがまだ優のことを好きなこと?

あたしが透くんのことを好きじゃないこと?

あたしが悪いこと?



きっとすべて。

全部全部、透くんは分かってる。


ただその事実を言葉にしないだけで。


言葉にすると、あたしが傷つくと思っているから。


自分自身も傷つけると理解しているから。


逆にその優しさがあたしを傷つけて苦しめる。罪悪感にさいなまれる。


だれかひとりを大切にすれば、他のだれかが傷つく。


あたしたちの間ではその悪い連鎖がとまりかたを知らずに、ドミノのように続いている。