君についた10のウソ

「優、ねぇ聞いて……」


『ん?なんだ?』



いったん耳からスマホを離して画面の一部をタップする。



「陰で傷ついている人に気がついて……表だけじゃなくて…陰にも目を向けてよ……」



あたしのスマホの画面には通話終了の文字。


だからあたしが優に向けて放った言葉は優には聞こえてない。


そっとスマホを持つ手に力をこめた。



きっと桃菜ちゃんから優を振るなんて、飛行機事故に遭遇するほどの確率だろう。


要するに、あのふたりが別れる確率は0%で。


どうしようも、ないじゃんか……


なにも持っていないあたしに太刀打ちできるわけがない。



ポツリ、ポツリとスマホの画面に雫が落ちる。


最初は無意識のうちに涙がでてきてしまったのかと思ったけど、それは違ったみたいで、数秒後、大粒の雨が降り出した。


子どものために速足で帰るサラリーマンも、仲の良さ気なカップルも。

みんな傘をさし始める。


だけどあたしの体は固まったまま。


右手には傘があるのに、それをさすこともできない。


髪も濡れ、肩からどんどん下へと浸透していく雨水。