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「……梨乃?」
冬音ちゃんの声で、はっ、と我にかえる。
さっきの事を思い出していたら、いつのまにか手が止まっていた。
でも、冬音ちゃんのメイクはばっちし。
「ごめん! できたよ! うん! 思ってた通り可愛い!」
冬音ちゃんがゆっくりと瞼を開く。
そして、ドレッサーの鏡を見て――
「これ、私!?」
目を見開いて驚いている。
「18時、あの鉄橋の上。ハルならきっと冬音ちゃんに気持ち伝えてくれる。ハルの所へ行っておいで」
彼女は『?』という顔をして、振り向いて可愛くなった顔をこちらへ向ける。
これ以上、私ができる事はない。
思い残した事はない。
緩くなった涙腺から、涙がまた流れそうだけど、満面の笑みで言えた。