「唯夏」 彼女――秋濱さんは構わずもう一度俺の名前を呼ぶ。 あんな地味な子が俺の知り合いだとは思えないのだろう。 男子までもがざわざわと騒がしくなる。 俺は堪えられなくなって、 「秋濱さん、名前で呼ばないでって何回も言ってるよね?」 引きつる笑顔で彼女に言った。 でもその言葉を彼女は無視した。 「今日放課後、そこの門で」 「は……?」 相変わらず無表情のまま彼女は何かを告げ、さっさと自分の教室に戻って行った。