「なんかお母さんみたい」

「お母さんは嫌だな。せめてお姉ちゃんがいい」

「じゃあ春ペアは姉弟だね」


春ペアーー春香と春のお互いの頭文字をとって付けられたあだ名。

中学の頃、昴が一人ずつ呼ぶのが面倒で考えたらしい。

いつの間にか広がって、今ではいろんな人が呼ぶ。


「おはよう。春ペアはーっと、遅刻じゃないのか! 明日は雨だな、うん」


もちろん先生方も。


「先生ひどい!」


笑いに包まれる教室。


「すまんすまん。てっきり遅刻だと思ってたからな」


む、間違ってはないけれど。

遅刻しそうにはなっーー


「先生、遅刻しそうにはなってましたよー」

「昴! 言わないでよ!!」


再び笑いに包まれる教室。

もう、なんで言うかな。


「あっはっは、やっぱりか。春ペアは変わらないな」


大きな声で笑う担任の近藤先生。

そんなに笑わなくてもいいじゃない。


「よーし、お前ら体育館に移動するぞー。秋川は早めに行けー」


未だ大笑いしながら廊下へと出て行く先生に続いて、ぞろぞろと教室を出て行くみんな。


「先に行ってるから」


早歩きで行ってしまった昴を横目に溜め息を一つ。

これも春の所為だ。

朝から先生にまでからかわれるなんて思ってなかった。

でも、なんだかんだいって春と一緒って思われることは嬉しい。

ーー私は春に救われたから。