神木の下で会いましょう

春は人気者だ。

端正な顔立ちに、175㎝の身長、人当たりが良いから誰とでも仲良く出来る。

男女問わずに好かれる存在。

太陽みたいな感じ。


「ごめんね」


先ほども謝ってくれた女の子がもう一度呟く。

首を振って大丈夫だとアピールすると、エレベーターを降りたところでその子が突然振り返って言った。


「でさ、本当のところどうなの?」


それは、先ほどとは打って変わり低い声音。


「聞いてるの?」


あまりの変わり様に驚きの声さえ出ない。

私と彼女の先を歩く他の子達の声がとても遠く感じる。

まるでこの場だけが切り離されたような。


「付き合ってるのか、付き合ってないのか聞いてるんだけどさ」


呆れたような言い方に小さな声で答えるしか出来ない。


「付き合ってない、けどーー」

「けどなに?」


間髪入れずに聞いてくる彼女。

怖い。


「付き合ってないならさ、春君と一緒にいるのやめてくれる?」

「……どうして?」

「どうしてって決まってるでしょ。春君と一緒にいたいって子はたくさんいるの。彼女でもないのに図々しくずっと一緒にいるのやめてよね」

「……ごめんなさい」

「謝れば済むとか考えないで」


見下すように冷徹に言葉を吐く姿に、体が一瞬震えた。

彼女がとてつもなく怖い。

どうしてそんなに冷たいんだろう。