神木の下で会いましょう

「ごちそうさまでした」


箸を綺麗に揃えて、空になった食器を見つめて呟く。

だいぶ人が少なくなった食堂内。

かなりマイペースに食べていたらしい。


「片付けるから食器寄越して」


食べ終わるのを待っててくれたのか、私のトレーを持って昴が立ち上がる。


「悪いからいいよ」

「いいから。この後、恵と約束あるしついでに持ってく。春も集中してるみたいだし」

「じゃあお言葉に甘えて。ありがとう」

「うん。あんまり夜更かししないようにね。じゃあまた明日」

「おやすみなさい」


昴が行ってしまって、テーブルには私と春の二人きり。

どうしようかと考えていると、両腕を突き上げ大きく伸びをする春が口を開く。


「俺らも行く?」


その問いにコクリと頷いて食堂を後にした。


「今日は見れそうにないな」


廊下を歩いていると、春が静かに呟いた。

隣を歩く春を見れば、その目は降り続く雨を写していた。


「雨だもんね」


灰色の空は穏やかな雨を降らせ、星や月が一切見えない分厚い雲に覆われている。

晴れてたら、綺麗な夜空を見れたのに。

合宿名物「天体観測」

山で行われる合宿ならではの醍醐味で、多くの生徒が楽しみにしているイベント。

天体望遠鏡から見る美しい天体の姿は見応えがある。

といっても、私たち生徒からすれば天体観測より天体観望といった方が合ってるかもしれない。

実際に星に興味があるのは少人数で、大半は友達やカップルが仲良く過ごす時間と化しているからだ。

先生方もその辺は分かっているらしく、割と緩く見守ってくれている。

でも一応「天体観測」なので後々レポート提出があるんだけど。