神木の下で会いましょう

「恵はそんなことで妬かないから安心して。春香のこと大好きだって言ってるくらいだから」

「……これからも昴って呼んでもいいの?」

「うん、いつも通りそう呼んでよ。じゃないと調子狂う」


笑って言う昴の顔がぼやける。


「春に怒られたよ。本当にごめんね」


謝る昴に必死で首を横に振った。

それと共に頬を涙が伝う。


「泣かないでよ。また春に怒られるでしょ」


昴の指先が流れる涙を優しく掬う。

だからますます涙は止まることを知らずに溢れ出した。

友達って大切だ。


「春香は笑った顔が一番似合うよ。だから泣き止んで」


ほら嬉しい言葉をちゃん知ってる。

昴と仲直り出来て良かった。

じゃないと一人ぼっちになっちゃうから。

一人は嫌いだよ。

それから暫くして涙がすっかり止まったのは30分後。

まるで私の涙を引き継ぐかのように外は雨が降っていた。


「ごめんね。ごはん遅くなっちゃった」


食堂へと続く廊下を歩きながら、隣を歩く昴を見上げる。


「別に気にしてないよ」

「でも昴は生徒会長で学級委員だから」

「肩書きより親友のが大切でしょ。はい、この話は終わり」


無理矢理話を終わらせた昴の頬が少し赤い。

照れてるのかな。

昴が言った“親友”って言葉に胸がじんわりと温かくなった。

外は生憎の天気だけど、私の心は晴天。

ーー雲一つない青空が広がっていた。