「俺が側にいてあげる」


一瞬、聞き間違えかと思った。

だけど、


「俺が側にいてあげるよ。だから一人で泣かないで」


はっきりと紡ぎ出された言葉が聞き間違えではないと訴え掛ける。

なんでそんなこと。


「……い、み……わかんない」


決壊したように溢れ出す涙と嗚咽。

人前で泣くことなんてなかったのに。


「大きくなるまで側にいてあげる」


抱き締められて、あやすように背中をポンポンと叩くこの人に無性に縋りたくなった。


「ほ……んと、に?」

「約束。ずっと一緒」


その言葉は私をどん底から救ってくれた。

でも限界みたい。

眠たくないのに、暗闇は容赦無く襲ってくる。


「今は寝てて」


優しい声音で私は落ちた。

あんなに深い眠りに落ちたのは久しぶりで。

目が覚めた時、自分の部屋にいて夢だったのではないかと思った。

でも身体は傷だらけで痛かった。

そのうち夏休みは終わって、戸惑いながら行った学校には何故か彼がいた。

なんで?

そう思った瞬間、彼は言ったんだ。


「側にいてあげるって約束したでしょ」


その日から、私の生活が人生が色づき始めたんだ。