神木の下で会いましょう

もしかして梗はそれが分かってて俺だけになんて言ってきたの?

昴も分かってて許可したの?

……嘘付けないじゃない。


「大切な友達なんでしょ」


うん、昴は数少ない大切な友達。

ほとんどの生徒が小学校からの持ち上がりで、学校で私なんかと仲良くしてくれる人なんて片手で足りるくらいしかいない。

この歳になっても影でこそこそ言われてることも知ってる。

失いたくなんてない。


「じゃあやることは一つだけだね」


パタンとノートを閉じて、梗はゆっくりと立ち上がりながら言った。

時計を確認すれば、勉強を始めて既に1時間経っている。

ある意味濃い内容だった所為か、60分はあまりにも早く進んだらしい。


「ちょっと休憩しよ」


そう言って梗は部屋から出て行ってしまった。

梗が出て行った所為で、前を向くと自然と昴が目に入る。

楽しそうに後輩とおしゃべりする姿に、普段なら私も輪に入っていけるのに、今はすんなりと入っていけない。

本気で怒る昴なんて初めてなんだもん。

やることは一つなんて言われたけど、直ぐには行動に移せないよ。


「……昴」


小さく呟いた言葉は談笑する声に掻き消されてしまった。