神木の下で会いましょう

とその瞬間、わざとらしい咳払いが聞こえた方へ向けば、不機嫌そうな昴と顔が赤いめぐちゃんが私達を見ていた。


「春ペア、イチャつかないで」


つい最近も言われた言葉が響く。


「イチャついてないもん、ね?」

「うん、幼馴染なら普通だろ」


そう普通。

だって春とは小学校から一緒だもん。

大きな溜め息を吐いて呆れたような表情の昴は、なんでか頭をかかえだした。


「あーもしかして羨ましいんでしょ?」


そうだよね。

だって隣に好きな子がいるんだもん。

抱き締めたくなっちゃうよね。


「馬鹿じゃないの?」

「至って正常ですよ?」


ニヤニヤが止まらないけれど。

もう昴も早く言ってくれればいいのに。


「春くん、春くん」

「なーに春ちゃん」

「邪魔者は一度退散しましょ」

「了解」


お腹に回っていた手が解かれて春と一緒に立ち上がる。


「二人共どこ行くの?」


不思議そうにまだ顔が赤いめぐちゃんが聞いてくる。


「飲み物取りに行ってくるね」


半分嘘で半分本当の事を言って春の家へと歩き出す。


「昴、頑張れよ」

「春に言われたくはないな」


後ろから聞こえる二人の会話にくすっと笑って、私は携帯で昴にエールを送った。

たった一言、「ありがとう」という返事が直ぐに返ってきて自然と顔が綻んだ。

二人の恋が叶うといいな。


「大丈夫。絶対に叶うよ」


隣に並んで笑う春は私の髪を撫でながら言う。


「知ってる」


そう言うと春はまた笑った。