神木の下で会いましょう

「春香ちゃんは料理得意なんだね」

「そうでもないよ。おしゃれな料理とか作れないし」


「そんなことないよ」と笑うめぐちゃんは今日一番の出来栄えである梅入り鳥つくねを頬張る。

何気に自信作の鳥つくねはピーマンの肉詰めが好きな春をイメージして作ってみたんだ。


「これ、美味しい」


自信作を食べて言葉を洩らす春にとっても嬉しくなる。


「やっぱり春香ちゃんすごいよ」

「すごくないって。めぐちゃんのがすごいじゃん」


庶民的な料理しか作れない私は、お菓子とかケーキとか、可愛い物を作れるめぐちゃんが羨ましい。


「ケーキとか作れるんだよ。私は全然出来ないからそっちのがすごいと思う」


ケーキ作りって繊細な作業らしく、大雑把で不器用な私には作れそうにない。


「酒井はお菓子作りが得意なの?」


女子二人で楽しく話し合うところに昴の声が響く。


「うん、少しだけ」

「そうなんだ。食べてみたいな」


優しく目を細める昴にめぐちゃんの顔はポッと赤くなる。

早く付き合っちゃえばいいのに。


「あ、あのね、今日ケーキ作ってみたの。お花見だから桜をモチーフに作ってみたんだ」

「本当? 甘い物好きだから嬉しい」


普段出さないような甘い声音で語り掛けるからめぐちゃんの顔はますます赤くなっていく。

そんな二人を見て隣にいる春と笑い合う。


「は、春香ちゃんと神木君も良かったら食べてね!」


慌てながら言う姿に私と春はまた笑い合った。