神木の下で会いましょう

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「よし、準備OK!」


お弁当よし、飲み物よし、レジャーシートよし。


「春の大好物もよし」


天気は快晴。

お花見にはぴったりのお天気。

お気に入りのフレアスカートにデニムジャケットを合わせて、お花見スタイルばっちし。


「行ってきまーす」


神社は目と鼻の先だ。

背中にリュック、右手にはお弁当を持ちながら玄関を出ると、


「おはよ」


眠そうな目を擦る春がいた。

デニムのジャケット姿の春。

ーードクンと心臓が音を立てた。


「お、はよう」


あれ、春ってこんなにかっこよかったっけ。


「春香可愛い。ジャケットおそろだ」


眠そうな目を細め笑う春。

急かす心臓の音。

やばっ、見れない。

火照る顔を隠すように目線を下げると、春の大きな靴が目に入った。


「持つよ。重いだろ」


右手に触れた春の左手。

ひんやり冷たい春の指先に触れた部分から熱を帯びる。

私どうしちゃったんだろう。


「春香?」

「え」

「どうかした?」


覗き込むように見てくる春と目が合う。

ドキッと高鳴る胸の音。


「は、る、かっこいいね……」


なんて。

最後の方は尻すぼみになってしまった。

一瞬、春の目が大きく見開かれる。

聞こえたかな?


「不意打ち過ぎだろ」


くしゃっと私の髪を春が撫でる。

ドキドキと脈打つ心臓。


「ほら、早くしないと遅れる」


だらんとぶら下がる右手を掴まれて、春に引っ張られながら歩き出す。