神木の下で会いましょう

「それより」


一人苦笑していると、満面の笑みで昴が口を開いた。

背中に嫌な汗が流れる。


「覚えてないってことはないよね?」

「な、なんのことだろ?」


うわ、笑顔が恐ろしい。


「へえ、覚えてないんだ。春はもちろん覚えてるよね?」


いつの間にか私の隣にいた春に昴は笑って問い掛ける。


「え、いや、すみませんでした」


素直に謝る春。

……裏切り者。


「春香は言うことないの?」

「すみませんでした」


笑顔という名の圧力に耐え切れず速攻で謝る。

怒った昴は怖すぎだ………。


「罰としてみっちり掃除してもらうから。酒井行くよ」

「あ、うん」


火挟とゴミ袋を持って歩く昴の後ろ姿を見つめる私と春。

昴を追いかけていくめぐちゃんはとても可愛いのだろうけど、今の私にそんな風に思う余裕などなかった。


「鬼畜だ」

「今に始まったことじゃないだろ」


そんなこんなで掃除は散々だった。

鬼と化した昴にこき使われ、掃除の場所は生徒がやりたがらない校舎裏だし、滅多に掃除しないからゴミと雑草は多いし。

近藤先生まで連れてくるからペンキ塗りとかさせられるし。

大掃除が終わる頃には、私と春はクタクタだった。