神木の下で会いましょう

「恐ろしいこと言ってたね」

「俺ら死ぬかも」


優等生はからかい甲斐があるけど怒らせてはいけない。

春と二人で震える。

でも、お互いの姿を見て噴き出した。


「こら春ペア! 話ちゃんと聞いてるか?」

「聞いてない」「聞いてませんでした」


同じタイミングで言って笑う。

笑いに包まれる三学年。


「どうせ去年と一緒だろ? 聞いても聞かなくても一緒」

「全く……なんでこう神木は可愛くないんだ」

「男が可愛いかったらキモいだろ」


近藤先生と春のやりとりに周りは爆笑。

ちょっとしたコント見てるみたい。


「もういい。ところでお前はいつ名字が神木になったんだ?」


春に勝てないからって私に振らないでよ。


「さっきです。門倉から神木に変わりました」

「……正直にジャージ忘れましたと言ったらどうだ?」

「忘れたわけじゃないもん。ちょっと家に置いてきただけだし」

「それを忘れたって言うんだぞ」


先生ムカつく。

こうなったらイジメてやる。


「じゃあそれでいいです。その変わり、今後一切春を起こしに行きません」


はっきりと大きな声で宣言すれば、あからさまに動揺する2組の先生。

ふん、春は絶対起きないからね。

その辺は担任なら分かっているはず。

当の本人は欠伸して私の髪を弄[いじ]ってるし。