「このメンバーでカラオケ行こうぜ。」
そう言って誘った君に乗っかってみんなでカラオケに行った。
歌がうまそうなぽちゃ子が音痴だったこととか、普段グループの中で地味なあいつが実はド派手なロックを歌いこなすことにもだいぶ驚いたけど。
一番驚いたのは、君がバラードを歌ったこと。
しかも、なかなかの出来でみんなが固まった。
ちゃかしてやろうと思ったのに、全然そんな空気じゃなくなった。
なんなの、君のくせに。
そうやっていつもはおちゃらけてるくせに時々違う一面を見せるから、君はずるい人間だろう。
勝手に見いってしまった自分が心底恥ずかしくて、それ以降変に君に冷たく接するようになってしまった。
それがさらに恥ずかしかった。
だけど君はそんなのも気にはしないようで(まあ冷たくとは言えどちょっと毒舌になったというくらいだから)、「なんだよ冷てーなー」なんて拗ねて笑うくらいだった。
そう、そこでも君は笑ってくれたからさらにずるかった。
そこでなんとなく、自惚れてたのかもしれない。
これだけみんなが仲のいいグループにいるから、錯覚しちゃったのかな。
いや、君が笑ってくれていることが、一番の原因だったのは言うまでもない。
けれどもそうしていながら私はずっと、知らないふりをしていた。
私はまだ、誰かを好きになったことがない。
まあもちろん、それは恋愛的な意味で。
だから知らないんだ。
知らなくていい。
知らないままがいい。

