冷たい彼の情愛。

 
顔を上げると、縁はいつの間にか手にしていたらしいティッシュで、涙でぐちゃぐちゃになってしまった私の顔を優しく拭ってくれた。


「呆れられると思うし嫌われちゃうかもしれないけど……聞いてくれる?」

「嫌わない……っ、嫌うわけない……っ。縁のことなら何でも聞きたい」

「うん。ありがとう。俺たちのことを周りに秘密にしてた理由なんだけどさ……もうひとつ、大きな理由があって」

「……?」

「咲世が苦しむのが嫌だからって言ったんだけど……もちろんそれは嘘じゃないけど、本当は怖かったんだ。もし同じことが起こった時に、咲世が俺から離れていくんじゃないかって」

「……どうしてそう思うの? 私は縁から離れるつもりなんてないよ?」

「そう思ってくれてても、苦しい想いをすれば少なからず、俺のこと、嫌になる。俺と一緒にいるのが苦痛になる。そうなれば、辛い決断をしないといけなくなるかもしれない。俺は……咲世が俺から離れていくのが、何よりも一番怖かったんだ」

「……縁」

「ごめん。弱いよな、俺。自分の感情だけで、咲世を縛ってたんだから」

「ううん、そんなことない……っ。縁は弱くなんかない」


目線を落としてしまった縁の頭に手を伸ばし、私は抱きつく。

はじめて伝えてくれた、縁の不安。

そんな想いを持ちながら、みんなの前で私の名前を呼んでくれたの?

縁は私のために、勇気を出して行動してくれたんだ。

私自身もたくさん不安になって気付いたことがある。

不安になるのは、それを大切に思って失いたくないからなんだって。

不安を認めることは、弱いことじゃなくて、乗り越えて前に進みたいと思っている証拠なのかもしれない。

それなら私も縁と一緒に、前に進みたい。