冷たい彼の情愛。

 
北野くんが私が見ていた資料にちらっと目線を落とす。


「ごめん、邪魔だった?」

「ううん。大丈夫だよ」

「ほんと? なら良かった。ね、今日の夜ってさ、予定ある?」

「え? ううん、特に、ないけど……」

「ほんと? 何人か集めてご飯に行くんだけどさ、良かったら花丘さんも行かない?」

「え、私も?」

「うん」


どうして私?

美紗子や真由がいれば一緒にと誘われることは多いけど、こんな風に私ひとりで誘われることはなくて。

戸惑ってしまって、目をぱちくりとさせて北野くんを見つめる。


「あ、もしかしてメンツ気になる? 大丈夫だよ、男は学科のやつもいるし、学科は違うけど女子も何人かいるから。俺、花丘さんともっと話してみたいと思ってたんだよね」

「私と? 特におもしろいことなんて言えないよ?」

「いーのいーの! 花丘さんと話せればそれだけで! いろいろ話そうよ! なっ?」


にっと笑いかけられて何となく断りづらくて、せっかく誘ってくれたし行ってみようかなという気になってきた。

ずっと落ち込んでばかりだし、いい気晴らしになるかもしれない。

とは言っても、やっぱり知らない人ばかりの中に入るのはツラい気がするから、美紗子たちを誘ってもいいかも聞いてみようかな……。


「……えっと、じゃあ」

「北野」

「!」


確認しようと私が口を開いた時、北野くんの名前を呼ぶ声がした。

その声にはっと振り向くと、縁が北野くんに目線を向けていた。

何で縁が北野くんを呼ぶんだろう……あ、そういえば、北野くんって縁と同じサークルだったっけ……。

あんまり話してるところは見たことなかったけど、ふたりって仲が良かったりするのかな?