「考える必要はない、って何? 何の関係もない、って何? 彼女は縁が大切に思ってた子なのに、どうして関係ないなんて言えるの? 考えないんじゃなくて、考えることから逃げてるだけじゃないの?」
「……関係ないっていうのは言い過ぎたかもしれないけど、逃げてなんかないよ。考えないのは本当にその必要がないからだし。っていうか、咲世は俺の気持ちが咲世じゃなくて、今も元カノに向いてるって疑ってるってこと?」
「っ、それは」
「俺は咲世のことが好きだって言ってるよね? 俺が嘘ついてると思ってる? それとも、俺の気持ちが変わっててほしい?」
「そういうことじゃなくて」
「じゃあ、俺のことが嫌になった? だから、元カノと戻ればいいって?」
「!! そんなわけないじゃない……! 私は縁のことが好きなんだよ……!?」
取り乱して声を上げてしまった私の頬に、縁がそっと触れてきた。
その指は私の頬をいつの間にか流れていた涙を拭い、縁は悲しげに笑う。
「……じゃあ、何の問題もないよね? 俺は咲世のことが好きで、咲世は俺のことを好きなんだから。俺たちはこれからも何も変わらないよ」
「……っ」
「もうこの話はやめよう? 昔のことで咲世と喧嘩なんかしたくない。嫌な思いさせたことはほんとごめん。咲世、仲直りしよ?」
ふわりと縁が私を抱き締める。
私を包み込む腕はあたたかくて、やさしくて。
私の本音を出させるために、縁は問い詰めるような言葉をぶつけてきたんだ。
縁はいつだって、私のことを考えてくれる。
縁は何も悪くもないのに謝るんだ。
きっとそれは、“もう二度と、自分のせいで付き合っている彼女に苦しい想いをさせたくない”という強い想いを縁が持っているから。
でも、そのせいで縁が自分の気持ちを抑え込んでしまうなんて、絶対にダメだよ……。

