冷たい彼の情愛。

 
でも……本当に、それでいいの?

私は今日のことを心の奥底に仕舞ったまま、何事もなく、縁と過ごしていけるの?

縁が一緒に過ごしていくのは本当に私でいいの?

心のずっと奥では本当は元カノのことを一番に想ってたりはしないの?

壊れてしまうかもしれないし、すごく怖いけど……、このままくすぶった想いを持ち続けるのは苦しすぎるんじゃない……?

もし私がこのまま黙っていたとしたら、いつか、縁が私と元カノとの狭間で苦しむ日が来るかもしれない。

さっきみたいに縁が考え込んでいれば、元カノのことを考えてるの?って、私はきっと縁のことを疑ってしまう。

そんなの悲しいし苦しすぎる。

ふたりの唇が離れ、私はゆっくりと目を開け、縁のことを見つめる。

……すごくすごく大切な人。

縁が苦しむ姿を見るのは、絶対に嫌だよ……。


「……縁」

「うん」

「……聞きたいことがあるの」

「何?」

「……縁、元カノと会ってたんだよね?」

「え?」

「ごめんね、偶然見たの。夕方に大学でふたりでいるところ。あの子……縁の元カノなんだよね?」


縁は息をのんで一瞬動きを止めたけど、すぐに笑顔を浮かべた。


「そっか、見てたんだね。あれは偶然会っただけでさ。ちょっと話しただけだし、咲世は何も心配することはないよ」


「ね?」と私を安心させるように、頭をするりと撫でてくれる。

縁は私のことを考えてくれてるんだ。

私が傷付かないように、何もなかったことにしようって。

……でも、私は真実を知ってる。