……あれ? この顔……この声……それに、さっきの香り……。
確かに感じたことのある雰囲気に、私は鼻を押さえたまま彼のことを見つめていた。
そして、彼も私のことを見つめ、私の表情を窺うようにして口を開く。
「……あれ? この前の子、だよね?」
「!」
やっぱり! あの時の人だ……!
私の記憶は正しかったらしく、最初に書庫に訪れた時にぶつかったその人が目の前に立っていた。
私が目を丸くして驚いた表情を見せると、それを肯定だと捉えたらしく、彼はふわりと笑みを浮かべる。
「やっぱり! ごめんね? 鼻ぶつけた? 大丈夫?」
「あ、大丈夫で……、っ!?」
「ちょっと見せて」
彼が私の顔をひょこっと覗き込んできて、自分の鼻を押さえていた私の右手を彼の手が包み込み、顔からそっと外す。
そして、私の顔をじーっと見てくる彼の顔に焦りの表情が生まれた。
「……まずいな……」
「へ?」
「鼻、曲がっちゃってる……」
「うっ、嘘っ!」
私は慌てて彼の手を振り払うようにして両手で鼻をペタペタと触って形を確かめるけど、いまいちよくわからない。
今までと何も変わらない気がするんだけど……いったいどうなってるっていうの……っ?

