冷たい彼の情愛。

 



「めい」って呼ぶ声がやさしくて。

彼女のことをいたわるような言葉がやさしくて。

どんな表情で、瞳で、縁が彼女のことを見ているのかはわからなかったけど、きっと、やさしいものだったんだと思う。

……縁が私のことを大切に想ってくれてることはわかってても、縁の心の中にはずっと、彼女の存在があるんだろうなとは感じていた。

きっと、彼女を守ってあげられなかったっていう後悔の気持ちが今もまだ残ってる。

……もしかしたら、彼女のことを好きだという気持ちもゼロではないかもしれない。

元カノに再会して気持ちが戻ってしまうことはよくあることだって、どこかで聞いたことがある。

ましてや、あんな告白をされてしまったら……?

縁の心は今どうなってるの……?

考えるだけで、不安に押し潰されそうになる。



部屋に帰ってきて、食欲はなかったけど何とか少しだけご飯を食べてお風呂に入った私は、ベッドの上に寝転がっていた。

レポートをしなくちゃいけないのに、何もしたくなかった。

ぎゅうっと胸に抱き締めているのは、縁からもらったちょうど胸の中におさまる大きさの、お気に入りの猫のぬいぐるみ。

茶トラのそれはふわふわして触り心地も抜群で、縁もお気に入りらしく、私の部屋に来てくれている時にはぽふぽふと触っている姿をよく見る。

今頃ふたりはまだ一緒に居るのかな……。

どこにいて、何を話して、何をしてるの……?

縁は彼女の告白に、なんて答えたの……?

嫌な予感ばかりが頭に溢れてしまって、さらにぬいぐるみの形が変わってしまうくらい腕に力を込めてしまう。

はぁとため息をついた時だった。

部屋のチャイムがしんとした空間に鳴り響いた。

……誰だろう?

ベッドからむくりと起き上がりインターホンの画面を覗くと、そこには縁がいた。