冷たい彼の情愛。

 
「……芽衣」

「もう、遅い? 私たち、やり直せない……?」

「待って、芽衣。場所変えよう。ここでする話じゃない」

「……っ、ごめんなさい」

「……いや、謝らなくていいよ。大丈夫だから」

「……うん……ありがとう……」

「……行こう」


縁の言葉に促されるようにして、ふたりは私がいる場所とは逆方向に歩き始めたようだった。

さっき一瞬見えた彼女は、縁と並んでも全くひけを取らないかわいさで、きっとお似合いで、私よりも小柄でふんわりとした空気を纏った、守ってあげたくなるような女の子だった。

以前、縁が好きになった女の子。

縁が守りたかったけど守れなかった女の子。

彼女は縁とよりを戻したいと思ってるんだ。

別れてからも、彼女の想いは立ち止まったままで、ずっと縁のことが好きだったんだ……。

胸がきゅうっと痛いくらいに締め付けられる。

その苦しさに立っていられなくて、力が抜けるように私はしゃがみこんでしまった。

どくんどくんと心臓が重く低く音をたてているのを全身で感じる。

……どうしよう……。

耳に入ってきていた会話も、目に映った光景も、まるで現実じゃないみたいだ。

ぼんやりとした夢の世界にいるような感覚がしたまま、私はしばらくその場にしゃがみこんでいた。