冷たい彼の情愛。

 
私の頭の中に胸を締め付けるような予感が浮かんだ時、縁の声が耳に飛び込んできた。


「久しぶりだね、芽衣。俺に会うために、ここまで?」


その声からはさっきまであった戸惑いや困惑は消えている。


「うん、ごめんね……。私が来たの、迷惑だった?」

「いや、そんなことないよ。でも、遠かっただろ?」

「……ううん、大丈夫。ありがとう。……ふふっ」

「え、どうしたの」

「ううん。不安でいっぱいだったんだけど、縁の笑顔見て安心しちゃった。縁、付き合ってた頃と雰囲気もやさしいところも変わってないから」

「そう、かな?」

「うん。……私の好きな、縁のまま、だね」

「……」


彼女の言葉に縁は何も答えない。

「付き合ってた」という言葉にやっぱり彼女が元カノなんだと悟ったのと同時に、ある言葉が私の頭に残った。

……「好きな、縁」?

“好きだった”、じゃなくて?

それって……。

コツンとヒールの音がして、私のいる場所から辛うじて見えていた彼女の後ろ姿が見えなくなった。

声だけが聞こえる。


「……私、忘れられなくて。縁のこと」

「……芽衣?」

「……ごめんね……? 突然こんなこと言って迷惑だってわかってる。でも私ね……まだ、縁のことが好きなの。……別れてからもずっと好きで……忘れられないの……っ」


彼女の真っ直ぐな告白が耳に入ってきて、どくん!と大きく心臓が音をたてた。

嘘……っ。