冷たい彼の情愛。

 



美紗子と買い物をしてお茶をした後、バイトに行くという美紗子と別れ、私は大学に戻ってきていた。

レポートを書くのに必要な資料をロッカーに入れっぱなしにしていたのを思い出したのだ。

資料を無事にロッカーから取り出し、ロッカーのある建物を出ると太陽はすっかり低い位置に移動していて、空はオレンジに染まっていた。

もう少ししたら東側の空から徐々に、紺色のグラデーションがかかり始める頃だ。

日が落ちるのもすっかり早くなったなぁと思いながらふと目線を動かすと、いくつかの背の高いシルエットが目に飛び込んできた。

その中にはよく見慣れたシルエットもあった。

……縁……!

彼の姿に気付いた瞬間、私は反射的に、横にあった木の陰に身を隠していた。

……気付かれなかったかな……?

音をたてないようにして、そーっと身を潜める。

本当はこんなことはしたくないけど、縁から目をそらすのもそらされるのももっと嫌だから、仕方ない。

縁たちとの距離はあまりなくて、話し声が聞こえてくるほどで。

見つかってしまう前に早く縁たちから離れたいと思うけど、私の隠れた場所は運悪く自販機が奥にあるだけで逃げ道がなく、しばらく隠れているしかなさそうだった。

早くここから離れてくれないかなぁ……。こっちに来られても困るし……。

ちょっとため息をつきそうになりながら、バレないようにとさらに奥に入り込もうと足を踏み出した時だった。