冷たい彼の情愛。

 
私が準備を終え、「どこに行こっか」と美紗子と歩き出した時、縁と不意に目が合った。


「!」


驚いてつい息をのんでしまったけど、私はすぐに縁から目をそらした。

わ、今のあからさますぎた?

変な態度にならなかったかな……?

そう不安を覚えるけど縁の方を見るわけにもいかず、私はぐっと我慢して、話し掛けてくる美紗子に相づちを打つ。

いつも以上に縁の存在を背後に感じながら、後ろ髪を引かれる思いで講義室を出た。


廊下に出ると、眩しいほどの太陽光が廊下に降り注いでいた。

窓の外に見える景色はキラキラしていて眩しい。

でも、そんな透き通るような青空とは反対に、私の心は曇ってしまっている気がしていた。

それはきっと、縁から目をそらしたことで、心の中にもやっとした罪悪感みたいなものが生まれた気がしたから。

こんな風に感じてしまうのは、目をそらされる寂しさを知っているからかもしれない。

……じゃあ、今、縁はどう感じてるのかな?

もしかして、縁から目をそらす時はいつも、今の私みたいな想いをしてるの?

縁の心を読めるわけじゃないから、縁が私と同じように感じているかなんてわからない。

でもそう気付けば、胸がちくんと痛んだ。