「……それに今、少し、状況が似てる気がして。あの時と」
「……」
「俺の勘違いの可能性もあるし、そういう人間じゃないって信じてるけど……人の心なんてわからないし、可能性がゼロじゃない限りは、ね」
縁が誰のことを言ってるかはわからない。
信じていても人を疑ってしまう悲しさが縁の中に見えた気がした。
「咲世には我慢させることになるけど……ほんとにごめん」
「……縁」
「サークルしてるところに来てほしくないっていうのもさ、気が抜けてる時に不意打ちで咲世見ちゃうと俺が反応しちゃうからなんだよね。俺の周りって勘がいいやつが多いし、いつも顔に出さないように必死でさ」
「……そうなの?」
そんな風に見えなくて驚いてしまう。
「うん。好きな子の姿を見たら反応しちゃうのは当たり前でしょ? 俺、咲世が絡むとポーカーフェイスなんて簡単に崩れるから」
縁は照れ臭そうに笑った後、すぐに真剣な表情に戻る。
「お願いだから、守らせて、咲世のこと」
「縁……」
「咲世を守りたいんだ。俺の手で」
縁の腕が私の体をすっぽりと包み込み、そのあたたかさには縁のやさしい想いがたくさん詰まってると感じた。
耳元で「咲世」って呼んでくれる縁の声が何だか切なくて、私も縁のことをぎゅっと抱き締める。
私たちには今があるんだから過去のことは知らなくてもいいと思ってた。
でも、縁の過去と想いを縁の口から聞くことができて、切ないけど嬉しくて。
それは、私のことを本当に大切にしてくれてるんだって、守ってくれてるんだって、今まで以上に感じることができたから。
……でも、縁の中で元カノの存在が今でも大きいことを知ってしまったことも事実。
縁は元カノに未練はないって言ってくれたし、私を想ってくれてる気持ちもすごく伝わってきたけど、心のどこかで元カノのことを忘れられてないんじゃないかって思ってしまうんだ。
元カノにしてあげられなかったことを、私に代わりにしてあげなきゃいけないっていう使命感のようなものがあるんじゃないかって。
……原動力は私じゃなくて、元カノ。
たとえそうだとしても、縁は私のためにちゃんと抱えてる想いを話してくれたんだから、私は縁の言葉を信じなきゃ……。