冷たい彼の情愛。

 
縁の手が私の手をそっと包み込む。


「……俺にとって、咲世は特別なんだ」

「……」

「元カノのことを知った後、彼女を苦しませるのが嫌で別れて……それからは、大切な人を守ってあげられなかった自分には人を好きになる資格はないんじゃないかって思うようになった」

「! どうして? 縁がそんな風に思う必要なんてないのに……っ」


縁のせいじゃないのに、何で縁が責任を感じるの。

人を好きになる資格がないって思うなんて……悲しすぎる。


「……ありがとう。でもね、その気持ちを変えたのは咲世なんだよ」

「私……?」

「うん。咲世に出逢ってから、世界が変わったような気がした。これから先、人を好きになることはないと思ってたのに、気持ちが止められなくて、咲世を俺のものにしたくて、咲世のことを諦められなかった。元カノのことも大切に思ってたけど、咲世のことはもっと大切なんだ。
弱いやり方かもしれないけど、周りに言わなければあんな目にも遭わせなくて済む。そうすることで、俺に咲世を好きでいれる資格がもらえるんじゃないかって。俺の世界に光を差してくれた咲世に、辛い想いを絶対にさせたくないんだ」

「……私、縁のそばに居られるなら、平気だよ? 縁がそんなに責任を感じる必要なんてない。同じことが起こるとも限らないじゃない」


私の言葉に縁はふるふると首を横に振る。

 
「咲世の言う通り同じことは起こらないかもしれないけど、もしそうなってしまったら、咲世は俺に責任を感じさせたくないって、心配させたくないって、そのことを俺に隠すよね? 今だって、本当は不安があったのに隠してたし」

「! そ、それは……っ」

「咲世の性格はそれなりにわかってるつもりだよ」


縁の言葉に間違いはなくて、口をつぐんでしまう。

確かに、もしそんなことがあっても、きっと私は……縁には言わないと思う。