冷たい彼の情愛。

 
「……うん、咲世の気持ちは嬉しいよ。ありがとう」

「縁……」

「でも、わかってほしいんだ。……どうしても譲れないことだから」


縁が気持ちを落ち着かせるように息をつき、真剣な表情を私に向けてくる。


「不安にさせたくなかったし俺の問題でもあるからあまり言いたくなかったんだけど……言わないことで咲世を不安にさせてたら元も子もないよな。本当のこと、話すよ」

「……本当の、こと?」


って、何……?


「付き合ってることを周りに言いたくないのは堂々とするのが苦手だから、って言ったの、覚えてる?」

「……うん」

「嘘をついたわけじゃないんだけど……本当は、元カノとのことが理由なんだ」

「……え?」

「あ、誤解しないでな? 元カノに未練があるとかじゃないから。俺が好きなのは咲世だけだよ。信じて」


縁の瞳は嘘をついているとは思えなくて小さく頷くと、縁は少し安堵したように微笑んだ。


「……俺さ、元カノのこと、守ってあげられなかったんだよね」

「守れなかった……?」

「うん。俺と付き合ってるせいで、彼女は嫌がらせされてた」

「!」

「その相手は俺に好意を持ってたみたいで、報われない気持ちの矛先を何の罪もない彼女に向けたんだ。1年の頃は俺は彼女と同じクラスだったから大丈夫だったけど、2年になってクラスが離れてから攻撃しだしたみたいで……俺はそのことに気付いてあげられなかった。
結構陰湿だったみたいで、彼女が苦しんでるって知らされたのは俺の親友の口からだった。ふたりの間に何かがあったわけじゃなかったけど、俺に相談してくれなかったことがショックだった」

「……それは、縁に心配かけたくなくて」

「うん、わかってるよ。でも、そのことがあって大切な彼女ひとりすら守ってあげられない自分の不甲斐なさに気付いたんだ。……俺はもう、自分のせいで大切な彼女を傷つけたくない。咲世には絶対に同じような想いをさせたくない」


縁の視線が私を真っ直ぐ貫く。

縁は私のことを考えて、周りに秘密にしておくことを提案してきたの?