冷たい彼の情愛。

 
だって、高校の時の彼女とはいつも一緒にいたんでしょ?

南さんや他の女の子は縁のことを近くで見れるんだよね?

なにも、ずっと一緒にいてほしいって思ってるわけじゃない。

付き合ってることだって、縁が望むならちゃんと秘密にする。

確かにヤキモチは焼いちゃうかもしれないけど、女の子と仲良くするな、なんて言わない。

私はただ、縁のことをこっそりでもいいから見つめていたいだけなの。

縁にわかってほしくて、私は言葉を紡ぐ。


「……遠くからでいいの。私、縁がバスケしてる姿が好きだから、見たいっていつも思ってて……。縁には迷惑かけないから」

「……咲世、もしかして、見てたのって今日だけじゃなかったりする?」

「! ご、ごめん。たまに、見に行ってたの……。でも本当に邪魔をするつもりはないし、ほんの少しでも見れれば良くて」

「……そっか」


はぁ、と縁から出たため息が部屋の中に大きく響く。

そんなに悪いことなの?

縁と付き合ってることを周りに言いふらしてるわけじゃないし、ただ見てるだけなのに。


「咲世の気持ちは嬉しいけど、これからは控えてもらってもいい?」

「……」

「わかってくれる? 咲世」


ぽんとやさしくなだめるように、縁の手が私の頭の上に乗せられる。

いつもなら心地いい重さだと感じるのに、今はそう思えなかった。