冷たい彼の情愛。

 
「あ、咲世、おはよー。起きた?」

「うん、おはよう……。縁、いつ来たの? ごめんね、退屈だったでしょ?」

「や、全然。来たのは1時間くらい前だけど、咲世の寝顔見てたら眠気襲ってきてさ、俺も寝ちゃってた」

「! やだ、見てないで起こしてくれたら良かったのに」


こんなに明るい場所で寝顔を見られてたなんて、恥ずかしすぎる。


「よく寝てたから起こすの悪いと思ったの。それに咲世の寝顔、かわいくてさー。どれだけでも見てられるし! って、結局つられて寝ちゃってたけどさ」


「10分ももたなかった」と言って向けられた縁の笑顔には悪気は全く見えなくて、私はそれ以上は何も言えずに、「もう」と小さく口を尖らすしかなかった。


「っていうか、ごめんな? 勝手に入っちゃって。電話掛けたんだけど出ないし、でも外から見たら部屋の電気は着いてるしで、心配になってさ」

「そうだったの? ごめんね、いつの間にか寝ちゃってたみたいで、全然気付かなかった……」

「ううん。謝る必要なんてないよ。咲世のかわいい寝顔も見れたし、俺得しかなかったから。こう、部屋に入る時にちょっとした泥棒気分も味わっちゃったし、楽しかったよ?」

「!」

「なーんて」


いひっと笑う縁はいつも私の前で見せてくれる表情で。

何だか無性に幸せな気持ちが湧き上がってきて、涙が出そうになった。

どうして涙なんて……?

……そっか、さっきまで不安な気持ちでいっぱいだったからだ。

でも、大丈夫。

不安にならなくても、縁はちゃんとそばにいてくれる。