「縁くん? どうかした?」
「いや。何でもないよ」
「早く行きましょ?」
「あぁ」
そんな会話をしながら、縁と南さんは他の友達の後を追うように歩き出す。
「シュートたくさん決めててカッコ良かったよ」と綺麗な笑顔で伝える南さんに対して、縁も笑顔で「ありがとう」と答える。
その様子は、まるで恋人同士。
ふたりの後ろ姿を私はぼんやりと見つめながら思う。
……まるで、縁の中に私が存在していないみたい……。
きっとここが大学じゃなければ、縁は慌てたような優しい声で「咲世、大丈夫? 怪我してない?」と私のそばに来てくれてたと思う。
でもそれは、周りに秘密にしている限り、ここではあり得ないことなんだよね……。
すごく悲しい気持ちが襲いかかってきて、私はふたりの後ろ姿から目をそらしてしまった。
「うひゃ~、近くで見てもやっぱりカッコいー。南さんもほんっと美人!」
「……」
「咲世? どうしたの? 大丈夫?」
「あ、うん……大丈夫。助けてくれてありがとう」
「ううん! じゃ、行こー」
「うん」
私は悲しさを振り切るようにして、縁が歩いていった方向とは逆に向かって歩き出した。

