冷たい彼の情愛。

 
……あの縁が、高校の時は周りの人たちにもわかるくらいに彼女のことを溺愛してた?

あんなに徹底して、大学では私と目を合わせようともしなくて冷たい縁が……?

今の私たちの状況を考えると、美紗子の話をどうしても信じることはできなかった。

それと同時に、どうして私とのことは周りのみんなに秘密にしようと提案してきたんだろう、と考えてしまう。

「堂々とするのが苦手だから」って言ってたけど、今の話を聞くと、そんなこともなさそうなのに……。

考え方によっては、堂々としたくないだけなら、付き合ってることを秘密にする必要だってないのかもしれない。

……もしかして、私が彼女、だから?

縁に限ってそんな風に思ってるなんて思いたくないけど……本当は、法学科でもないし特別美人でもない普通すぎる私が彼女だってことが、恥ずかしかったりする……?

本当は、南さんみたいに綺麗で頭もいい人が良かったりする……?

一度生まれてしまった不安の種は簡単に育っていく。

実際、縁の彼女だと周りに知られたら、きっと、考えたくないようなことを思われたりもするんだろうな、とはずっと思ってた。

だって私は縁のように人を魅了できるような人間じゃないし、誇れるものだって持ってないから。

心の奥底ではそうやって不安を感じる時もよくあるけど、縁が伝えてくれる想いを信じることで私は立っていられるのに……。