私と縁が付き合っていることを知らない美紗子と真由は、楽しそうに会話をすすめていく。
「もうね、すっごい溺愛だったらしいの! 登下校はいつも一緒で、休みの日もよく街でふたりで過ごしてたみたいだし。1年の時は同じクラスでよく一緒にいたみたいで、目も当てられないくらいだったって。2年になってクラスが離れて、3ヶ月くらいで別れちゃったみたいだけどね」
「稲葉くんの溺愛って想像つかない! もっとクールだと思ってた~」
「そう? 確かに授業中とか普段の様子は大人っぽいけど、あんな笑顔ができるくらいだもの。実はあれが彼女にも見せてる笑顔なんじゃない? ね、咲世もそう思わない?」
「えっ!? な、何でっ!?」
突然話を振られて、私は明らかに挙動不審に聞き返してしまった。
美紗子の言う通り……ううん、それ以上に縁は私の前では甘い笑顔を見せてくれる。
でもそれを私が知っていることは、他の人には知られちゃいけないことなのだ。
美紗子は不思議そうな表情で首を傾げる。
「何でって、理由はないけど、そう思わない?」
「! あ、う、うん。そ、そうかもしれない、ねっ」
「でしょ?」
「それが本当なら、ギャップにものっすごく萌えるんだけど!」
まさにそのギャップに毎日のように萌えてます……と思いながらも、私の頭の中を占めるのは違うことだった。

