「……ちょっと、妬いた。」
「へっ?」
「咲世が俺以外の男と心を通わせてるみたいで……心狭すぎるけどそんな光景見たくないって思ってた。でも、咲世も咲世だよ? 俺以外の男と話すなとか笑い掛けるなとは言わないけど、あんな風に無防備に笑いかけたら男が調子に乗るだろ?」
「!」
縁がヤキモチ焼いてくれてたっていうの……?
私と同じように……?
もしかして、さっき唸ってたのも、このことを考えてくれてたの……?
「咲世の心は俺が一番わかっていたい。調子に乗るのも俺だけでいい」
「縁……」
戸惑いを隠せないまま縁の名前を呼ぶと、はっと気付いたように、少し拗ねたような表情だった縁はそれを崩し、「独占欲強くてごめんね」と申し訳なさそうに笑った。
謝る必要なんてないのに。
そんな風に想ってくれて伝えてくれて、嬉しくて嬉しくて仕方ないのに。
「……ううん、嬉しい。……私もね、同じこと思ってたの」
「……え、同じって……もしかしてヤキモチ?」
「……だって、縁、みんなの人気者だもん。女の子と楽しそうにしてれば妬けちゃうよ」
「……」
縁が私の言葉にぽかんとした表情をする。
何だか恥ずかしくなった私は「とにかく、私は縁だけが大好きだから安心してね」と早口に伝えて、縁の胸に頬を寄せた。
すると、縁の腕が私の体に絡み付き、ふわりと胸の中に包み込んでくれる。
「俺も咲世だけが大好き。……っていうか、咲世がそんな風に思っててくれたなんて、嬉しい!」
その言葉とともに、縁の腕にぎゅうっと力がこもる。
「っ、く、苦しいよ、縁」
「咲世がかわいすぎるせいだよ? くくっ」
「何それ? ……もう」
よく理解できない縁の言葉に、私もお返しとばかりに、ぎゅーっと縁に抱きついた。
「ねぇ、咲世」
「うん?」
「今日はうちに泊まって? ……もっと一緒にいたい。ずっと、一緒にいよ?」
「……うん」
この時の私は、ずっとこうやって縁と一緒に、大きな不安もなく穏やかな気持ちで過ごしていくんだと、信じて疑わなかったんだ。

