「でもさあ、石井、さよりの為に一生懸命じゃない。」

静香が取り戻したお菓子をもりもり食べながら言う。

「今だって、先生に教え方聞きに行ってくれてるんでしょ?」

「そうそう、健吾、他人の為には滅多に動かない奴なのに、やっぱ北見さんは特別なんだね。」

瀬良君が私を見てニッコリと笑う。

「それは!…ご飯作る代わりに、家庭教師するっていう約束があるからで…」

「それでもさ、家庭教師なんて、テキトーにやってても石井ならこなせるでしょ。」

「石井君、さーちゃんの事、真剣なんだね~。」

皆がニコニコしながら私を見ている。

「なによ、何が言いたいのよ。」

私は憮然と言い放った。

「ま~、要するにさ。今回はさよりが折れてあげたら?石井にだって食べ物の好みくらいあるだろうし。」

静香がそうまとめたところでチャイムが鳴り、皆自分の席に帰っていった。



「それにしてもあの二人、ケンカする話題がもう夫婦みたいなネタだってこと自覚してんのかね?」

「本当、健吾があんなに一生懸命なのになんで両想いだってことに気付かないんだろう。」

「さーちゃんと石井君、うまくいくといいね~。」