「見せてみろ……これはこの公式じゃなくてこっちを使うんだよ。それにこの問題、計算間違ってる。凡ミスに気をつけろよ、ただでさえ正解率低いんだから。」

「え？……本当だ、間違ってる。ってゆうか一瞬で分かる健吾が凄いんだよ。」

私は恨めしい顔で健吾を見やる。

「家庭教師代わり請け負ってるんだから、これぐらい当たり前だろ。」

目の前の家庭教師様は尊大な態度でそう仰る。

「～～あ～もう、考えたってダメな時はダメなのよ！休憩‼」

私は叫んで席を立った。

今日は大吾さんがプリンを差し入れてくれたから、それがおやつだ。

コーヒーの準備をしながら健吾に話しかける。

「今日も大吾さん遅いの？」

「ああ、しばらく忙しいらしい。また夕飯ラップして置いといてくれってさ。」

大吾さんは大手自動車メーカーに勤めている。

健吾が小さい頃は片親ということで仕事も色々融通してもらっていたらしいが、健吾が中学生になったあたりからバリバリ働き出して出張で家を空けることも多い。

それでもいつもニコニコしていて、一緒に夕飯を食べれない事を申し訳ないと言っては差し入れを買ってきてくれる。