その日、午後から仕事があるという健吾の父親である大吾さんが、我が家で一緒に課題に取り組む私達に差し入れとして買ってきてくれたショートケーキのイチゴを、健吾がコーヒーを取りに席を立った隙に私が食べてしまったのだ。

それから健吾はおかんむり。

秀才の健吾さんに課題を教えてもらわなければいけない私は大いに困っていた。

「大体、あの状況で人のイチゴ食べるってどんだけ食い意地はってんだよ。」

「残ってるから食べないと思ったの!」

「それよりお前、課題の続き頑張れよな。さっきの問題、答え間違ってた。」

「うぐっ。」

食後のコーヒーをふきそうになった。

「家庭教師代わりの俺としては、とりあえず次の試験で50番以内には入って欲しいね。」

そう、食事を作る代わりに、彼には私の勉強を見てもらっているのだ。

(くっ、スパルタ……でも、好き……なんだよな。)