健吾が肉じゃがに手を伸ばした。

私は自分も食事に集中するふりをして、内心ドキドキしながらそれを見守る。

肉じゃがを咀嚼する健吾の喉仏に目がいき、違う意味でドキドキしてくる自分を自覚して慌てて目線を箸に落とす。

「……美味い。」

健吾がボソッと呟いた。

それを聞いて、ホッと肩の力が一気に抜けていくのを感じる。

「でしょ～！肉じゃがにコーラ入れるとコクが出て美味しいのよ。」

「ああ、甘みが絶妙だな。味もよく染みてるし。」

肉じゃがにコーラは、ワンランク上の味付けにしたい時に私が使う常套手段だ。

健吾が次々とおかずを平らげていくのを見て、私の心は目の前の肉じゃがのようにホクホクしてくる。

「じゃあ、昼間の一件はもう時効だよね。」

私は意気揚々と健吾に告げる。

「……何の話だ？」

健吾が片方の眉だけ上げて、意地悪そうな顔で聞いてくる。

「何って……例のあれよ。」

「あれって？」

この言い方は……絶対わざとだ。

意地悪っ‼

「～～～もう‼ケーキのイチゴ食べちゃったくらいでそんなに怒んなくたっていいでしょ‼」