中に座っていたあの人。
「桜さん、」
色白で真っ直ぐな黒髪を一つに束ねている。
どことなくあのお姫様と重なる部分がある。
「杏、久しぶりね」
柔らかく微笑む桜さん。
「お久しぶりです」
ここで、仮面を外して本来の自分へと戻る。
「立ち話もなんだから、座って」
とソファへと促される。
花籠桜。
あたしの2つ上の19歳。
今は花籠グループとして、働いている。
花籠会は極道でもあり、生粋のお金持ちなのだ。
「報告はある?」
報告…、
『阿修羅』のことに、いや総長黒木颯についてだ。
「阿修羅との接触に成功しました。これからも、出来る限り近づこうかと…、」
「颯は…、」
「今は、まだ」
「そっか」
力なく笑う桜さん。


