「前田司。5月21日生まれ。母親は駅前のスナックのママで父親は越前組組長の右腕。兄貴は族の抗争に巻き込まれて植物状態。毎日お見舞い行ってんだー」
「っ!」
カッと目を見開く前田司。
「お前、その情報どこで知った」
低く絞り出すような声。
「前田司くん、裏の力ナメないでね?」
そうだよ、あたしはあの人の為ならこの街だって潰せる。
『阿修羅』も一握りなのに、あの人が悲しむから。
だから、生かしてやってるんだ。
「あれ?みんな固まってどぉしたのー?」
怯えた顔は実に滑稽だ。
ケタケタと壊れた人形のように笑う。
そして、一歩一歩『阿修羅』に近づく。
固まって動けないのか動かないのかはわからないけどジッとあたしだけを見てる。


