私はそこで、また涙を流した。

昨日あんなに泣いたのに、涙はまだ枯れないらしい。



知らなかった。

彼がキクちゃんのために、そこまで動いてくれていたなんて。


彼は私が子供達がいるのも気にせずボロボロ泣いているのを見て、仕方ないなとでも言いたげな目をしながらハンカチで涙をふいてくれた。

頑張って目を開けてみると、彼が持っていたハンカチはやけに見覚えがあった。


「…あれ……そのハンカチ………」

「あぁ……キクがくれたんだ。

昨日、ちょうど最後のときに。

母親にも2つあげていたから、多分父親と母親のだろうな。

その様子だと……お前も貰ったか?」

「うん…いつもありがとうって」

「そうか…俺もそう言われた。

……なら、大丈夫だな。

俺とお前には、キクの共通の想い出がある」


見上げると、私にそう言ってくれた彼の目も少し潤んでいて、顔の筋肉も強ばっていた。

私はそっと、キクちゃんから貰ったハンカチを取り出す。


「あなたも泣いていいんだよ…?

沢山手助けしたあなたが一番泣きたいんだから…」


私がそう言うと、彼は私の顔を見て、それから静かに涙を流した。

私は彼の涙を、キクちゃんのハンカチでそっとふいた。