「キクの決意を聞いた後、しばらくしてある男達が来た。

前に話した、あのやけに所作がいい男達だ。

さっき話した、あの未記入の契約書の件で来たんだろうと思って盗み聞きしたら、案の定その通りだった。

だから、そいつらがうちを出たところで俺が呼び止めて、裏取り引きをしたんだ」


「裏取り引き…?」


不穏な言葉に私は不安になってくる。

そんな私に、安心しろと言うように彼は私の頭を撫でた。


「スケを引き取るときにキクも一緒に売る。

ただし、キクをスケと一緒に売ることは他言無用。

そういう取り引きだ。

そうして昨日、取り引き場所にキクを連れていってきた。

父親はスケを玄関で引き渡して、そのあと見送りもしなかったからな。

全くバレずに、少し離れた場所でキクを引き渡したんだ。

キクの代金は俺が受け取った。

将来お前と二人で暮らしたいからな、キクを助けた報酬に半分くらい貰っても構わないだろ。

俺達がここを出るときに、半分置いていくよ」