恋するBread*それでもキミが好き

確かに入社したての頃は女子社員から飲みに誘われたり告白されたこともあったが、今じゃそんなこともまるでなくなった。


「いやマジっすよ。でも高瀬さんが仕事以外には興味ないって噂は社内では有名ですから。プライベートはどうなってんのか、実はみんな気になってるんですよ」

そんな噂があったなんて、知らなかったな。

「あの素朴でかわいらしい女の子、彼女なんですか?」

俺がなんて返事をするのか、キラキラした目で見てくる藤村。

「そうだな……いつか教えてやるよ。ほら仕事に戻らないと、編集長来たぞ」

その言葉にガックリと肩を落とし、名残惜しそうな顔をする藤村。


あいつをからかうのは面白い。でもああ見えて悩みながらも真面目に仕事をする藤村のこと、俺は結構好きだ。

後であいつにもちゃんと話してやろう。
そう思ってたけど、結局この日も忙しくて無駄話をしている暇などなかった。


最終電車を降りたとき、藤村が帰り際にまたあの仔犬のような目をして俺を見ていたのを思い出し、笑ってしまった。