恋するBread*それでもキミが好き

7時、お店の大きな窓から彼の姿が見えた。

二週間ちょっと会わなかっただけなのに、数ヶ月会っていないかのような感覚。


「おはよう」

「お、おはようございます」


いつもの優しい笑顔を向けられた私は、初めて話しかけられたあの日のようにドキドキして、胸がギュっと熱くなった。


「あの、高瀬さん。前にメールで伝えてた新作パンが、今朝焼き上がったんです」

「本当に?」

「それで、高瀬さんに食べてほしくて」

丁寧に袋詰めしたパンを手渡す。

「ありがとう。今すぐ食べたい気分だけど、後でじっくり頂くよ。〝美緒ちゃん、がんばったね〟」

その瞬間、涙が出そうになった。


頭の中で沢山考えた。お客さんやおじさんおばさん、高瀬さんが食べてくれている姿を想像して、美味しいって言ってもらえるように、いっぱい考えたから。


「冷蔵庫で冷やして食べても美味しいと思います」

「分かった。食べたらまたメールするね」

「はい。ありがとうございました!お仕事がんばってください」