恋するBread*それでもキミが好き

焼き上がる直前、おじさんがお店にやってきた。

「おはよう美緒ちゃん。どう?」

「今丁度焼き上がりました」

オーブンから取り出すとき、数えきれない程腕に火傷をしている私は、慎重に鉄板を取り出した。

柿の表面にシロップを塗って。


「できた……」

「あら、美味しそうね」

いつの間にか来ていたおばさんが、焼き上がったばかりのパンをじっくり眺めながら言った。

「どれどれ」

そう言ってパンを食べようとしたおじさんの手を、おばさんが制止する。

「だめよ。最初に渡す人はもう決まってるんだから。ね、美緒ちゃん」

「あ……はい」


パンを冷ましている間、いつも通り朝の作業を手伝った。

開店準備をして、鏡で自分の姿を確認する。

沢山汗もかいて、正真正銘完璧なスッピン。今日はいつもより酷いかも。