『僕のこと、ちゃんと覚えていますか?元気にしてる?』

毎年桜の咲く季節になると届く幼なじみからの手紙。
誰かの心ないイタズラかもしれない。

(忘れるわけないじゃん…。ばか。)

その幼なじみはまだ私達が小さな頃にいなくなってしまったから。だからこんな手紙、届くはずがないし返事のしようがない…。

『毎年ちゃんと読んでくれてるみたいで僕は嬉しいなぁ』

だけど期待に胸をふくらませ、毎年桜が咲く頃に手紙が届くのを待っている。

『僕が病気で死んじゃった分も君には100年でも200年でも生きていて欲しい。』

手紙はいつも決まって同じ場所に届くんだ。

『僕はいつでもあの場所にいるよ。』

「…うん」

私の幼なじみの彼はいつまでも同じ桜の木に宿っているという。


…2人で一緒にいた桜の木に。