――夢を諦めなければならないかもしれないことを。


 ――修司との未来を失ってしまうかもしれないことを。


 そして、ドキドキと動悸が収まらなくなった。


 日本にいても夢は叶えられる、そう思う傍らで、修司との別れをどこかで予感している自分の本心に気がついて。


 修司をとって、夢を諦める?


 諦めるとまではいかなくても、もしかしたら遠回りするハメになるのだろうか。


 けれど、修司を失ってまで自分は本当に夢を叶えたいと思っているのだろうか。


 二律背反―――どちらかを選ばなければならない、そんな苦悩を背負ってしまった。




 「なにが、無謀なんだ?」

 「…え?」




 目を伏せていた修司が、いつものように怜悧な眼差しで、ゆっくりと問いかけてくる。




 「お前なら、そうお前の上司やそのフランス支社の編集長が見込んでくれて、打診された話なんだろ?」

 「………うん」

 「お前は何をどう迷ってるんだ?」




 修司の声音はけっして何も美澄に強要してもいなければ、自分の意見を押し付けてもいない。


 それなのに、どうして自分はこんなに不安なのか。


 どうして、自分で自分の道を今までのように決めて、それを修司に報告できないのかと、あらためて自分の中の心の奥底を探る。




 「お前はどうしたいと思ってる?」 




 決まってる。