「あ、あのね、修司っ」

 「……え?」




 もたれていた修司の肩先から、ガバッと勢いよく体を起こした美澄の勢いに、修司が面食らったように目を瞬かせる。




 「わ、私…実は、修司に相談があって」

 「相談?」 




 怪訝そうな修司の顔に、またも迷いが過る。


 隠すことなどできるはずもない。


 もちろんそうだ。


 けれど、この言葉を口にしてしまうことで、二人の関係は果たしてこのままでいられるのか、そんな不安がふいに美澄の心に湧き上がってきた。


 しかし、今この機会に口に出してしまわなければ、とても修司に話すことなどできない気がして…。


 それこそ互いに忙しい身、物理的にも美澄が決断をくださなければならない期限にも間に合わなくなってしまうだろう。


 彼女が一人で勝手に結論を出してよい問題ではない。


 もっと若い頃、それこそ大学を出たての頃とは事情が違うのだ。




 「私…、実は会社から、今、フランス支社への転勤を打診されてて」

 「……フランス支社?」




 修司の目が大きく見開かれる。




 「その…、3年、長くなれば5年。あちらの編集長が見込んでくれて、ぜひ私を鍛えたいからフランスに来てくれって。もしこの話を受ければ、間違いなく私のキャリアにプラスになるし、ステップアップにも繋がる。だから、どうしたらいいのか、私、迷っているの」




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