「………ん?」
ゆっくり目を開ける。
顔を上げると、帰り支度をしているクラスの生徒たちの姿が映った。
そうか…。
俺、授業中に眠くなって…
夢を見てたのか。
中学2年の秋、初めて恋をした…あの日の夢。
久しぶりに見たのに、全く光景が色褪せてなかったな…。
ふぁ…と欠伸をすると、誠がニヤニヤしながら俺のところにやって来た。
「陽希、高校に入学して早々に爆睡するとか、度胸あるよなぁ~。」
「もうすぐ4月も終わるんだから、入学して早々…ってわけでもないだろ。眠かったんだから仕方ねぇじゃん。」
「まあ、確かに…今の授業はヤバかった。あの先生の声、眠気を誘うよなぁ…。」
「あの落ち着いたトーンの声は、授業向きじゃない。」
思いっきり背伸びをすると、誠は俺をジーッと見ながら不敵な笑みを浮かべた。
「なんか、良い夢でも見た?」